"Stay hungry. Stay foolish." 50s a rugged man

好きなもの、好きなことのblog

RICHARD LANGE

  A.LANGE & SöHNE / Richard Lange

 

  梅雨も中盤に入りましたが、晴れたと思えば猛暑。そして梅雨が明けるころには何処かで大雨の被害があり、対岸の火事ではないと言い聞かせてます。梅雨が終われば、日本の夏、猛暑の夏ですね・・・

 コロナ自粛も全国的に解禁されましたが、以前みたいな生活スタイルには戻れず謹慎中。夜の出事(遊びではありません)も月に数回(ちなみに去年の4月、5月は月から金までほぼ毎日)。そこで梅雨の夜長(意味不明)を活用し長文ブログ決行!

 

  機械式腕時計が好きで完璧に逆上せ上がってしまった時期があり、暴走して買ってしまった逸品です。事実上これが機械式腕時計(俗に言う雲上モデル)の上がり時計となってしまいました。腕時計の世界も底知れぬ奥深さがあるのでザックリと Richard Lange を上がり時計として紹介します。

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 どうしてランゲ?

 

 腕時計に限ったことではなく見た目が気に入るかが最優先です。そして、その物自体に見出す付加価値が自己満足に浸ることができるかがポイントです。特に腕時計などは一生ものなので先を見越しての選択となります。車検と同額の維持費やサポート体制も念頭に入れなければなりません。購入費用、維持費等の相当額の出費を覚悟しないといけないので妻帯者は「ザ・土下座」を習得しましょう(爆)。

 A.Lange & Söhne をもっと知りたいと思い歴史的背景、飽くなき制度への追及、伝統の進化形、デザインの意匠と多角的に調べてみました。まぁランゲに限らず雲上ブランドと言われるところも調べておりますが(爆)。

 特に東西ドイツの冷戦から解放され、1994年に復活した時の衝撃は腕時計好きなら記憶に新しいかと思います。ギュンター・ブリュームライン氏がかなりパテック・フィリップを意識して発表した4作品は、その後リリースするモデルを見越してのラインナップと言われてます。一見、野暮ったく或いは武骨にさえ見えるランゲを象徴するシリンダーケース。文字盤上の黄金比率とシンクロするように計算されつくされたバランスは秀逸です。 

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 そもそも機械式腕時計とは極小で繊細なパーツで組み立てられているので不具合はつきものです。最新型のフライス盤やワイヤー放電加工を用いて、寸法公差が千分の1㎜単位という極めて精密なパーツを使っても不具合は起きてしまいます。そのパーツを組み立て・調整するのですが、最後の仕上げは時計師の腕にかかります。

 では、不具合のリスクを避けるにはどうしたらいいのか?私の考えですが輪列がシンプルな時計ほどリスクを回避できると思ってます。つまりパーツ数が少ないことです。デイト表示が加わるだけで不具合のリスクが高くなりますから。時針と分針のみの2針が理想なのですが個人的に秒針は外せません。ちなみにクロノグラフはコンプリケーションウォッチ(複雑時計)の部類にズッポリ入るとてもデリケートな構造です。ランゲクラスになると、現行正規品で1815クロノグラフは500万オーバー、ダトグラフだと1000万円超えてしまいますから恐ろしい世界です。しかも不具合があれば、程度によって本国送りになり 、期間も費用も大きくなります。

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 では、秒針がある時計だと特殊な機構を持つ時・分・秒針は度外視し、スモセコがセンターセコンド(中三針)となりますが中三針が大好物。そのわけは、秒針を文字盤中央に持ってくるための輪列の工夫やそれまでに至る試行錯誤の過程からそのブランド価値の尺度を垣間見ることができるからです。

 加えて、文字盤上には針が3本しかないためデザインが非常に難しい。余白が多いため間延びを感じさせないようなバランス。一つでもバランスを欠くようなことがあれば欠点だけ誇張されますから緊急事態どころではなく崩壊です。加えて文字盤が良くてもケース、ラグの形状、文字盤とのバランスなど細部をみるとこれまたキリがありません。

 

 

 Richard Lange とは 

 

  A.Lange & Zöhne は1815のスモセコを持ってました(過去形)。シースルーバックから見える洋銀の4分の3プレートに施されたグラスヒュッテストライプの美しさ、ハンドエングレービングの虜になってしまいました。そして、ランゲのアイコン的モデルの Lange 1 入手のための計画を立ててたのですが、2006年のS.I.H.H で発表された Richard Lange を見てド真ん中のストライクで瞬殺。あっけなく Lange 1 から方向転換。その年の秋に実物を確認し Richard Lange を手に入れる決意を固めました。簡単に方向転換とはいえ2年の準備期間後の2008年に購入。2年かかったのは、高額で現金が足りないのと、初期ロットの不具合を避けるためです。今でも手にした瞬間の興奮した記憶は忘れません。

 

 科学観測用デッキウォッチの伝統を受け継ぐこのモデル。最高水準の精度を望み、最善の視認性が最優先されました。まさにランゲが掲げる『伝統の進化形』の代表作の一つにノミネートされます。高精度を生み出す cal.041.2 は "Datograph" や "double split" からクロノグラフ機構を取り外したと単なる引き算で捉えがちですが大間違い!最高水準の精度を生み出すわけを簡単にですが備忘録を兼ね紹介します。

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 cal.041.2 

  • 直径30.6mm / 高さ10.5mm
  • パーツ数 / 199
  • ゴールドシャトン / 2
  • 完全巻き上げ時のパワーリザーブ / 36時間
  • テンプ振動数 / 毎時21600回(6振動)
  • フリースクランブテンプ
  • 耐震機構付きテンプ調整用偏心錘付き

 ザクっとですがこんなスペックです。 

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 4分の3プレート

 メリットとしては、輪列の軸をすべて一つのプレートで支えることにより、全体の安定性を向上させることにあります。ただ、それぞれの対応する軸をすべて同時に差し込む職人の器用さが求められ、しかも二度組工程を採用しているメーカーはあまり存在しません。一度組では組立て作業用のネジを使い、二度組目で青ネジを使用します。

 シースルーバックから眺めるムーブメントの美しさは格別なもので時間を忘れて見入ってしまうほどです。グラスヒュッテストライプと面取り、ゴールドシャトンに青ネジそしてテンプ回りをニヤニヤしながら眺めると変態です。しかも見えないところでもペルラージュ仕上げ、サンバースト、など表面仕上げが施されています。

 地板の素材は洋銀で。銅、ニッケル及び亜鉛で構成される合金で、表面処理は行っていないそうです。高い安定性と耐食性に優れて、時間か経つと黄色味かかった緑青が表面を覆い、保護膜の役割を果たすため、電気メッキは不要とされています。

 

 出車

 Richard Lange がセンターセコンドのド真ん中ストライクだといいましたが、センターセコンド用の輪列は、4分の3プレートと独立した受けとの間に取り付けられています。その3連出車の仕様に感動しました(アホです)。

 オメガ(cal.284)のように大抵はトルクの強い3番車から持ってくるとやりやすいのですが、3番車から極端に加速させるとセンターセコンドの運針が怪しくなります。対して1分間に1回転する4番車から動力を取ると運針は安定します。しかしトルクが期待できなくなります。ここで注目したいのがギア比による摩擦を考慮し、3連出車の材質を変えてることです。3連出車の真ん中はスチール製で他二つは真鍮製になっています。

 設計したブルクハルト・ガイア氏は「振り角を落とさないように、どの位置に出車を設けるかいくつ設けるかで悩んだ」、「フルに巻くと振り角は300度。38時間後でも最低270度は振れている」と語っています。

 他にも、秒カナ→真鍮、3番カナ→銅、4番カナ→真鍮といった具合に意図的に変摩擦を起こし部品の耐久性を高めてます。

 

 テンプ回り

 自社製の髭ゼンマイを使うことによって、十分な振り角を出すためにテンワと髭ゼンマイをデータ化しトルクに見合う髭ゼンマイを使用できます。フリースプラングの飽くなき制度の追及。そして、固定型可動式の髭持ちはビートエラーを減らす極めて有効な機構となります。また巻き上げ髭も素敵に見えてきます。動力伝達そして慣性モーメントを安定させ、大きくするかはどのメーカーも永遠の課題です。創業者の息子であるリヒャルトランゲが、ベリリウムを僅か添加することにより髭ゼンマイの弾力性が改善されることを特許出願したことはあまりにも有名な話です。

 テンプ受けにはハンドエングレービングを施して唯一無二の存在となり、スワンネックも古典的な意匠を醸し出します。

 天真のヴィッカース硬度はHV680で非常に高い部類に入ります。

 

 余談ですが、リューズを巻く瞬間からテンプが動くさまを見れるのは圧巻です。

 

 巻き止め

 3針時計にしては強烈な心臓部が搭載され、トルクを安定させるため巻き止機構を装備してます。そのために主ゼンマイの3分の1を犠牲にするそうです。これらの手法は(PP,VC,APのVZSSなどで知られてる)、往年の天文台コンクールに使用されていたそうで、その手法を完全に再現してるそうです。では、どのメーカーもできるのか?それは、ランゲがダトグラフやダブルスプリットといった有能なクロノグラフを自製していたからこそ成せる技だと思います。

 

 長くなってきた・・・。上記事の内容では序章に過ぎず、奥が深くキリがないので餡子(ムーブメント)に関しては打ち切ります。

 次は時計を選ぶので最も重要な餡子の皮、つまり文字盤側を紹介します。どんな雲上モデルでも個々の嗜好に勝るものはありません。第一印象の衝撃を良い意味で持続できるものを選びたいです。

 

 Richard Lange をはじめランゲはシリンダーケースを採用し、サイズは 40.5mm X 10.5mm 。当時はまだ「40mmオーバーのドレスウォッチはデガイ」というイメージで不安がありましたが時代の流れには逆らえないのと、懸念してた間延びは感じませんでした。ただしシャツのカフスボタンはキツキツですから、袖口が狭いシャツはボタンを外すしかありません。一番の解決策はシャツはオーダーして、時計を装着する方の袖口を1cm大きくとれば問題解決(アッサリ言うなって)!

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 文字盤には、かつてのランゲに倣った925シルバー(多分・・・。もしかして1000?)が使われて、モッコリと盛り上がった印字と6分の1秒のインデックス。そして、そのインデックスを正確無比に『ビシッ!!』と指し示すピーンと長く伸びた青焼きの秒針は中三針の醍醐味です。チラ見で時刻を瞬時に読み取る視認性。文字盤中央部には極僅かながら段差をつけ間延びを感じさせないデザインとなってます。

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  ※上画像:時針の影からわかるように真上からの撮影ではありませんので、秒針も6分の1のインデックスからズレています。

 

 文字盤上のデザイン、一つのモデルに一つのムーブメントといったように、ランゲの伝統を継承し、常に進化形を具現化する理念もランゲを気に入った要因の一つです。

 ランゲ復興を成し遂げた今は亡き、第四代当主ウォルター・ランゲ翁とギュンター・ブリュームライン氏に敬意を払いたいです。

 

 余談ですが、値上げ値上げでランゲを買う余力、体力がもうありません(爆)。

 

 

追伸:このブログに関しては、訂正や追加情報を加えるかもしれません。間違った情報や記憶が曖昧なためです。